<事例>
Aさんは、配偶者が既に亡くなっていたので法定相続人は長男B,次男C,
三男Dが法定相続人でした。
この度、Aさんが亡くなったので3兄弟で遺産分割の話し合いを始めましたが
その際に、長男Bさんが父親Aさんの相続開始の8年前に5000万円の現金贈与を
受けていたことが明らかになりました。
この5000万円は、Bさんの生計の資本としてAさんから贈与されたものであり
Bさんは、申告期限までに贈与税の申告書を提出して贈与税の納税も済ませて
いました。
当初、Aさんの相続財産は1億3000万円と思われていて円満な遺産分割と
なるはずでしたが、特別受益が明らかになったことによって
遺産分割の話し合いが、長引く結果となってしまいました。
特別受益がある場合で、遺産分割協議が申告期限までに間に合わない場合の
相続税の申告について教えてください。
なお、父親Aさんの債務は6000万円であったとします。
<回答>
相続税の申告期限になっても未分割の場合、一旦法定相続割合で
分割して相続税の申告書を提出しなければなりません。
今回、長男Bが特別受益5000万円を受贈しているため法定相続割合の
分割の方法が問題となっていますが、結論は以下の通りです
父親Aさんの遺産総額は1億3000万円と当初は考えられていましたが
特別受益5000万円が明らかになったことによって、これらの総額
1億8000万円を遺産総額とみなします。
次に、1億8000万円を3兄弟の法定相続割合で分割しますと
各人が6000万円となります。しかし、長男Bの6000万円には
特別受益5000万円が含まれていますので、今回の相続で長男Bが取得する
財産は、1000万円となります。
つまり、未分割の相続税の申告書上では各人の取得財産は
B=1000万円,C=6000万円,D=6000万円となります。
(根拠条文:民法903条)
次に、債務控除ですが未分割の申告ですので債務もB,C,Dの各人が
3000万円づつとなります。
しかし、Bの特別受益分5000万円には債務控除の適用がないため
Bは、取得財産1000万円に対して3000万円の債務控除となり
2000万円の控除不足が発生します。
この場合、2000万円の控除不足をC,Dからそれぞれ1000万円づつ
控除することによって、債務の全額に対して債務控除を適用する
ことが可能となります。
(根拠条文:相続税基本通達13-3:本文及び但書)
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