今日の事例は、できるようで実はできない制度をご紹介します
<事例>
甲と乙の夫婦にはABの子がいました。
今年、夫の甲が亡くなりその3カ月後に妻の乙が死亡しました。
甲乙ともに遺言書を作成していなかったので、ABは遺産分割で
悩みました。
その結果、妻乙の相続税の申告期限までに夫甲の遺産について未分割
でした。 つまり、2次相続(妻乙の相続)に係る相続税の申告に
当たっては、妻乙の固有の財産に加えて、夫甲の遺産のうちの
妻乙の法定相続分に相当する部分も妻乙の遺産として申告をしました
しかし、第2次相続(妻乙の相続)に係る相続税の申告書の提出後に
第1次相続(夫甲)の相続財産が、妻乙の法定相続分よりも少なく
決まりました。
この場合、相続人であるABは第2次相続について払い過ぎの税額を
還付するための更正の請求をすることはできますか?
<解説>
結論から申し上げると、できません。
論点を改めて整理すると
今回の事例は、夫甲が妻乙よりも先に死亡しましたが妻乙の相続税の
申告期限まで夫甲の遺産分割が成立しなかったために妻乙の相続財産
に夫甲の遺産の1/2が必然的に加算されました。
つまり、ABの兄弟は妻乙の相続税の申告に当たって妻乙の遺産を
以下の算式で計算した金額で計上しました
<妻乙の遺産=妻乙の固有の財産+夫甲の遺産の1/2(法定相続分)>
しかし、その後夫甲の遺産分割が成立したところ妻乙の遺産は
<妻乙の遺産=妻乙の固有の財産+夫甲の遺産の1/2より少ない金額>
となりました。
このとき、妻乙の遺産を過大に計上したことによって当初支払過ぎている
ABの相続税額を、還付できるのか?というのが今回の論点ですが、
できません。
それは、相続税法32条に定められていないからです。
相続税法32条の細かな解説は、ここでは割愛させていただきます
上記のような事例は、実務では時々あります。
でも、過払いの相続税額を還付請求できないのでご注意ください
この記事以外にも、下記URLのマイベストプロ神戸に私のコラムの
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